》うはいきませんが、下総と云えば、何《な》んですね、累《かさね》の出た処を羽生村と云うが、家《うち》の師匠などはまるで累も同様で、私をこづいたり腕を持って引張《ひっぱ》ったりして余程変ですよ、それに二人の中は色でも何《なん》でもないのに、色の様に云うのだから困ります、何《ど》うせ云われるくらいなれば色になって、然《そ》うしてずうっと、二人で下総へ逃《にげ》ると云うような粋《いき》な世界なら、何《なん》と云われても云われ甲斐がありますが」
 久「うまく仰しゃる、新吉さんは実《じつ》があるから、お師匠さんを可愛いと思うからこそ辛い看病も出来るが、私のような意気地なしの者をつれて下総へ行《ゆ》きたいなんと、冗談にも然《そ》う仰しゃってはお師匠さんに済みませんよ」
 新「済まないのは知ってるが、迚《とて》も家《うち》には居られませんもの」
 久「居られなくっても貴方が下総へ行ってしまうとお師匠さんの看病人がありません、家《うち》のお母《っか》さんでも近所でも然《そ》う云って居りますよ、あの新吉さんが逃出して、看病人が無ければ、お師匠さんは野倒死《のたれじに》になると云って居ります、それを知って
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