いけません、此の間はお気の毒でね、あんな事を云って何《ど》うもお前さんにはお気の毒様で」
久「何う致しまして、丁度|好《よい》処でお目に掛って嬉しいこと」
新「お久さん何処へ」
久「日野屋へ買物に」
新「本当にあんな事を云われると厭《いや》なものでね、私は男だから構いませんが、お前さんは嘸《さぞ》腹が立ったろうが、お母《っか》さんには黙って」
久「何ういたしまして、私の方ではあゝ云われると、冥加《みょうが》に余って嬉しいと思いますが、お前さんの方で、外聞がわるかろうと思って、誠にお気の毒様」
新「うまく云って、お久さん何処へ」
久「日野屋へ買物に」
新「あの師匠の枕元でお飯《まんま》を喫《たべ》ると、おち/\咽喉《のど》へ通りませんから、何処かへ徃《い》ってお飯を喫べようと思うが、一人では極りが悪いから一緒に往っておくんなさいませんか」
久「私の様な者をおつれなさると外聞が悪うございますよ」
新「まア宜《い》いからお出でなさい、蓮見鮨《はすみずし》へ参りましょう」
久「ようございますか」
新「宜いからお出でなさい」
と下心があると見え、お久の手を取って五目鮨《
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