りるという理合《りえゝ》はねえから己《おら》ア往かねえ、坊様に怪我アさせてはなんねえから」
 花「そんな事をいわずに往っておくんなせえ」
 惣「爺《じい》やア、どうか和尚様をお送り申してお呉れ、お前が往かなけりゃア私が送り申さなければならないのだから、往っておくれな」
 多「じゃア何《ど》うしても往くか、己此処まで来て敵も討《ぶ》たずに後《あと》へ引返すのか、なんだッて此の坊様はおっ縛《ちば》られて居たんだナア」
 とブツ/\いいながら道恩和尚の手を引いて段々山を下り、影が見えなくなると樹立《こだち》の間から二人の悪漢《わるもの》が出て参り、
 甲「手前《てめえ》たちは何《なん》だ」
 花「はい私共は安田一角|先生《しぇんしぇい》が此方《こちら》にお出《いで》なさると聞きまして、お目にかゝり度《た》く出ましたもので」
 乙「一角先生などという方はおいでではないワ」
 花「私共はおいでの事を知って参りましたものですが、一寸お目にかゝり度《と》うございます」
 乙「少し控えて居ろ」
 と二人の悪漢は、互に顔を見合せ耳こすりして、林の中へ這入って、一角に此の由を告げると、一角は心の中《うち》
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