却って心配で病気に障るから」
 新「じゃア用があったらお呼びよ」
 園「あゝ」
 というので拠《よんどころ》なく出て行くかと思うと又来て、
 新「お園どん/\」
 とのべつに這入って来る。すると俗に申す一に看病二に薬で、新五郎の丹精が届きましたか、追々お園の病気も全快して、もう行燈《あんどん》の影で夜なべ仕事が出来るようになりました。丁度十一月十五日のことで、常にないこと、新五郎が何処《どこ》で御馳走になったか真赤に酔って帰りますると、もう店は退《ひ》けてしまった後《あと》で、何となく極りが悪いからそっと台所へ来て、大きい茶碗で瓶《かめ》の水を汲んで二三杯飲んで酔《えい》をさまし、見ると、奥もしんとして退けた様子、女部屋へ来て明けて見ると、お園が一人行燈の下《もと》で仕事をしているから、
 新「お園どん」
 園「あらまア、新どん、何か御用」

        十

 新「ナニ、今日はね、あの伊勢茂《いせも》さんへ、番頭さんに言付けられてお使にいったら、伊勢茂の番頭さんは誠に親切な人で、お前は酒を飲まないから味淋《みりん》がいゝ、丁度|流山《ながれやま》ので甘いからお飲《あが》りでないか
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