飲んで居る夫婦|連《づれ》の旅人《りょじん》で、
 男「作や、此方《こっち》へ這入《へえ》んねえ」
 といいながら、葭屏風《よしびょうぶ》を明けて出て来た男の顔を見て、
 作「イヤア兄いか、何《ど》うした新吉さん珍らしいなア、久し振りだ、これは何うも珍らしい、実に思え掛けねえ」
 新「汝《てめえ》、大きな声で呶鳴《どな》って居たが相変らずだなア」
 作「おやお賤さん、誠にお久し振でござえやした」
 賤「おや作藏さんお前の噂は時々していたが、相変らず宜《い》い機嫌だね」
 作「本当にお賤さん、見違える様になった、少しふけたね、旅をしたもんだから色が黒くなったが、思え思った新吉さんととう/\夫婦になって彼処《あすこ》をおッ走《ぱし》ったのかえ、今まア何処《どこ》にいるだえ」
 新「彼方此方《あちこち》と身の置き処《どころ》のねえ風来人間で仕方がねえが、是も皆《みんな》人に難儀を掛け、悪い事をした報《むくい》と思って諦めているが、何商売を仕度《した》くも資本《もとで》がないのだ、汝《てめえ》まぶ[#「まぶ」に傍点]な仕事を安田と相談していたが、己も半口載せねえか」
 作「お前《めえ》あの事を
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