どうも御無沙汰を致しまして」
 安「此の夜中雪の降る中を踏分けて何《ど》うして来た」

        七十五

 隅「あの今日富五郎が来ましてね、何か先生に頼まれた事があると云って、私の処へ客になって来まして、お酒に酔って何《なん》だか種々《いろ/\》な事を云いますの、けれども其の様子がさっぱり分りませんから、其の事に付いて先生にお目に掛らなければ様子が分りませんから」
 安「それはどうも、富五郎が行ったかい、貞藏、富五郎が往ったって」
 貞「だから私が先生に申上げて置きました、彼奴《あいつ》は誠にあゝいう処ばかり遊びに参るのが好きでげす、全体道楽者でげすからなア、彼奴|余程《よっぽど》婦人|好《ずき》でげすよ」
 安「で、富五郎が往って何《ど》ういう話し振の、まア一杯[#「一杯」は底本では「一抔」]飲め」
 隅「有難うございます、まアお酌を」
 安「イヤ一杯[#「一杯」は底本では「一抔」]飲め」
 隅「左様でございますか、貞藏さん、お酌を、恐れ入ります」
 貞「いや久し振りでお酌をする、私《わし》の名を心得ているから妙でげすな、久しい前に一度先生のお供を致しましたが、其の時逢った一
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