き》がかって締りが厳重にしてあるから、や、そら、おや一人で傘なしかい」
隅「はい少しは降っておりましたが、気が急《せ》きましたから、跣足《はだし》で参りました」
貞「おゝ/\私《わし》はやっと此処《こゝ》まで雪を渉《わた》って来たのだが、能く夜中《やちゅう》に渡しの船が出たねえ」
隅「はい、あの、船頭は馴染でございますから、頼んで渡して貰って、漸《やっ》とのことで参りました」
貞「それはえらい、さア此方《こっち》へ、先生たった一人で渡を渡って跣足で参ったと云うので」
安「それは思い掛けない、なに傘なしで、それはそれは、雪中といい、どうも夜中といい、一人でえらいのう、誠にどうも、さア此方《こっち》へ」
隅「先生誠に暫くお目に掛りませんで」
安「いや誠にこれは、うーん己は無沙汰をしております、暫く常陸へ参った処が、彼方《あちら》で些《ちっ》と門弟も出来たから、近郷の名主庄屋などへ出稽古を致して、久しく彼方にいて、今度又|此方《こちら》へ来た処が、先《せん》に住《すま》った家は人に譲ったから、まア家の出来るまで、当期此の庵室におる積りで、だが手前能く尋ねて来たねえ」
隅「誠に
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