侍でございましたが、運が悪くってこういう訳になったからといって頼むにも、二人ながら武士の家に生れた者だから、親類へも話が仕好《しい》い、よう富さん、本当にお前、私がこういう処へ這入ったからいけないかえ……前にいったことは嘘かえ」
富「こりゃアなんとも恐れ入ったね……旨いことを仰しゃるなア……又一ぱいになった、そう注いじゃあいけない……えゝ…本当にそんな事をする気遣いは無いて…どうか御疑念の処は…私は困るよ……どうも理不尽に私を疑《うたぐ》って、脊骨をどやすというから、驚いて、言訳する間《ま》は無いから逃げたのだが、神かけて富五郎そんな事はないので……」
隅「そんな心配は無いじゃアないか、何《なん》だねえ、お前、私がこんな身の上になっていても、敵とか何《なん》とか云って騒ぐと思ってるのかえ、私は表向き披露《ひろめ》をした訳でもなし、敵を討つという程な深い夫婦でもない、それ程何も義理はないと思うから、悪体を吐《つ》いて出たのだもの」
富「そりゃア義理はありましょうが、私はあなたが、あんな愚痴|婆《ばゝあ》の機嫌を、よく取ってお在《い》でなさると思っていました。あなたがこれを出るのは本
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