/\休める」
 と云うので御酒を召上ったが、少し飲過ぎて心持がわるいと小用場《こようば》へ徃《い》ってから、
 新「水を持て、嗽《うがい》をしなければならん」
 と云うので手水鉢《ちょうずばち》のそばで手を洗って居りますると、庭の植込《うえごみ》の処に、はっきりとは見えませんが、頬骨の尖《とが》った小鼻の落ちました、眼の所がポコンと凹《くぼ》んだ頬《これ》から頤《これ》へ胡麻塩交《ごましおまじり》の髯《ひげ》が生えて、頭はまだらに禿《は》げている痩せかれた坊主が、
 坊「殿様/\」
 と云う。
 新「エヽ」
 と見るやいなや其の儘トン/\/\/\と奥へ駈込んで来て、刀掛に有った一刀を引抜いて、
 新「狸の所為《しわざ》か」
 と斬りつけますと、パッと立ちます一団の陰火が、髣髴《ほうふつ》として生垣《いけがき》を越えて隣の諏訪部三十郎様のお屋敷へ落ちました。

        八

 新左衞門はハテ狐狸《こり》の所為かと思いました。すると其の翌日から諏訪部三十郎様が御病気で、何をしてもお勤《つとめ》が出来ませんから、二人して勤めべき所、お一方《ひとかた》が病気故、新左衞門お一方で座光寺源
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