んでどうこうという訳にはいかぬ」
富「無法に打《ぶ》ちますよ」
安「なに打たれはせぬ、仔細ない」
富「仔細ないと仰しゃるが、私《わし》の跡を追掛《おっか》けて来て富五郎はいるか、慝《かく》まったろう、イエ慝まわぬ、居ないといえばじゃア戸棚に居ましょうというので捜しましょう、そうで無いにしても表で暴れて家を揺《ゆすぶ》ると家が潰れるでしょう、奴の力は大した者だから、やアというと家《うち》に地震が揺《い》って打潰《ぶっつぶ》されて了《しま》います、何《なん》にしても家《うち》にいると面倒だから迯《に》げて下さい、え、先生」
安「じゃア路銀を遣るから先へ逃げな」
富「迯げるなら一緒に迯げたいものです」
安「一緒に迯げては人の目に立ってよくない、己が手紙を一本付けるから之《これ》を持って、常陸の大方村《おおかたむら》という処に私《わし》の弟子があるから、其処《そこ》へ行って隠れておれば知れる訳は無いから、ほとぼりが冷めたら又出て来い、私は一足|後《あと》から、ナニ暴れても仔細ない、逢い度《た》いといえば余義ない用事が出来て上総《かずさ》へ行ったとか、江戸へ行ったとか、出鱈目を云って
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