むか無礼至極な奴、女の足に刀を踏まれては猶更《なおさら》汚《けが》れた、浄めて返せ」
仁「是は先生至極御尤、御尤もだが酒も何もまずくなったなア、是はどう云う身分柄か知らんが馴染だから勘弁という詫の仕様はないが、誰かあゝお隅か妙な処で出会《でくわ》したなア、先生/\麹屋の隅でございます、能く来たなア、え隅か、是は何《ど》うも詫《あや》まれ/\、重々何うも済まぬ、先生/\お隅でございます、貴公知らなんだ、あはゝゝゝどうも麁相《そそう》はねえ詫びるより外に仕方がない、詫びて勘弁ならんという事は無い、重々恐入ったと詫びろ、能く来た、あの先生、先生/\勘弁してお遣りなさいお隅でござる」
安「な何を戯言《たわこと》、勘弁相ならん」
と猶更額に筋を出して中々承知しませんから、惣次郎もまさか其の儘に逃出す訳には往《ゆ》かず、困り果てゝおりますと、奥の離座敷の方に客人に連れられて参って居たは花車重吉、客人は至急の用が出来て帰りましたから、花車は遥《はるか》に此の様子を聞いて、惣次郎とは固《もと》より馴染なり兄弟分の契約《かため》を致した花車でございますから心配しておりまする。
多「もし旦那様/\
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