んだ不調法を致しました、当人に成代りましてお詫《わび》を申上げます、何分御勘弁を願います」
 安「なに詫を申すなら何処の者か姓名も云わず、人に物を詫びるには姓名を申せ、白痴《たわけ》め」
 惣「ヘエ、手前は羽生村の惣次郎と申す何も弁《わき》まえませぬ百姓でございます」
 安「なに、羽生村の惣次郎、うむ名主だな、イヽヤ名主だ、羽生村にて外《ほか》に惣次郎と云う名前の者は無い様だ、名主役をも勤むる者が人の前を通る時には御免なさいとかお先《さ》きに参るとか何《なん》とか聊《いさゝ》か礼儀会釈を知らぬ事も有るまい、小前《こまえ》の分らぬ者などには理解をも云い聞けべき名主役では無いか、それが殊《こと》に武士《さむらい》の腰の物を足下《そっか》にかけて黙って行《い》くと云う法が有るか、咎《とが》めたらこそ詫もするが、咎めずば此の儘《まゝ》行《ゆ》き過ぎるであろう、無礼至極の奴、左様ではござらんか仁村《にむら》氏《うじ》」
 仁「是はお腹立の処|御尤《ごもっと》も是は何も横合から指出《さしで》て兎や角いうではないが、けれども斯《こ》ういう席だから、何も先生だって大したお咎をなさる訳でもあるまいが、今
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