《ほか》に身寄親類もない心細い身の上でございますから、何分願います、外の女とは違いまして真面目に奉公を致して居りますもの、贔屓《ひいき》にして下さいというので、惣次郎の気に入りまして、度々《たび/\》遊びに来る、其の頃の名主と申しては中々幅の利いた者ですから、名主様の座敷へ出る時は、働き女でも芸妓《げいしゃ》でも、まア名主様に出たよなどと申して見得《みえ》にしたものでございます。惣次郎もお隅には多分の祝義を遣わし折節は反物《たんもの》などを持って来て遣る事も有るから、男振といい気立《きだて》といい柔和温順で親切な名主様と、お隅も大切に致し、何《ど》うも有難いと思い、或日の事、
 隅「私は外に参る処もない身の上でございますから、何分御贔屓なすって下さい」
 というので、惣次郎も近々《ちか/″\》来る中《うち》に、不図した縁で此のお隅と深くなりました事で、今迄堅い人が急に浮《うか》れ出すと是は又格別でございまして、此の頃は家を外《そと》に致す様な事が度々でございますから、お母様《っかさん》も心配する、弟御《おとうとご》もございますが、是はまだ九歳で、何も役にたつ訳でもございませぬから、お母
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