れて仕舞うんだ、何か代物《しろもの》が残って居るかも知れねえから見てやろう、ウワアお長屋の衆」
 と云うから驚いて外《ほか》の者が来て見ると、葛籠が有るから、
 ●「おゝ彼処《あすこ》に葛籠がある、好《い》い塩梅《あんばい》だ、おや、中に、ウワア、お長屋の衆」
 と来る奴も/\皆お長屋の衆と云う大騒ぎ。すると二つ長屋の事でございますから義理合《ぎりあい》に宗悦の娘お園が来て見ると恟《びっく》りして、
 園「是は私のお父《とっ》さんの死骸|何《ど》うしたのでございましょう、昨日《きのう》家《うち》を出て帰りませんから心配して居りましたが」
 △「イヤそれは何《ど》うもとんだ事」
 というので是から訴えになりましたが、葛籠に記号《しるし》も無い事でございますから頓《とん》と何者の仕業《しわざ》とも知れず、大屋さんが親切に世話を致しまして、谷中《やなか》日暮里《にっぽり》の青雲寺《せいうんじ》へ野辺送りを致しました。これが怪談の発端でござります。

        六

 引続きまして申上げまする。深見新左衞門が宗悦を殺しました事は誰《たれ》有って知る者はござりません。葛籠に記号《しるし》も
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