っても向《むこう》から返したこたア無いくらいだから、其様《そんな》に気を揉むこたア無いけれども、仕方がねえから大屋さんを起すが宜《い》い」
 ●「アノ奥の一人者の内に食客が居るから、彼処《あすこ》へ行って彼《あ》の人に行って貰うが宜《よ》うございましょう」
 △「じゃア連れて来ましょう」
 と吊提燈を提げて奥へ行《ゆ》くと、戸袋の脇から真黒な面で目ばかりピカ/\光る奴が二人這出したから、
 △「ウワアヽヽ何《なん》だこれおどかしちゃアいけない」
 と云う中《うち》に、二人とも一生懸命で路次の戸を打砕《ぶちこわ》して逃出しました。
 △「アヽ何《なん》だ、本当にモウ何《ど》うも胸を痛くした、こりゃア彼奴《あいつ》が泥坊だ、私は大きな犬が出たと思って恟《びっく》りした、あゝこれだ/\これだから一人者を置いてはならないと云うのだが、家主《いえぬし》が人が善《い》いから、追出すと意趣返しをすると云うので怖がって置くのだが宜《よ》くない、此処《こゝ》にちゃんと葛籠があるわ、上方者だと思って馬鹿にして図々しい奴だ、一つ長屋に居て斯《こ》んな事をするのは頭隠して尻隠さず、葛籠を置いて行くから直ぐに知
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