た二度目に手を入れると今度はヒヤリ、
 ○「ウワ、ウワ、ウワ」
 甚「おい何《な》んだ」
 ○「何《ど》うも変だよ冷てえ人間の面アみた様な物がある」
 甚「ナニ些とも驚くこたアねえやア、二十五座の衣裳で面《めん》が這入《へえ》ってるんだ、そりゃア大変に価値《ねうち》のある物で、一個《ひとつ》でもって二百両ぐれえのがあるよ」
 ○「ウン、二十五座の面か」
 甚「兄い、だから己に見せやと云うんだ」
 と云われたから、今度は思い切って手を突込むとグシャリ、
 ○「ウワア」
 と云うなり土間へ飛下りて無茶苦茶にしんばりを外して戸外《おもて》へ逃出しますから、
 甚「オイ兄い、何処《どこ》へ行《ゆ》く、人に相談もしねえで、無暗《むやみ》に驚いて逃出しやアがる、此の金目《かねめ》のある物を知らずに」
 と手を入れて見ると驚いたの驚かないの、
 甚「ウアヽヽ」
 と此奴《こいつ》も同じく戸外へ逃出しました。すると其の途端に上方者が目を覚して、
 上「さアお鶴《つる》起《おき》んかえ時刻は宜《え》いがナ、起んか」
 と云うとお鶴と云う女房が、
 鶴「お止しよ眠いよ」
 上「おい、これ、起んかえ」
 鶴
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