前だの」
新「ヘエ私《わたくし》で」
男「イヤ何《ど》うも図らざる処で懐かしい、何うも是は」
と新吉の手を取った時は驚きまして、
新「真平《まっぴら》何うか、私《わたくし》は金も何もございません」
男「コレ、私をお前は知らぬは尤《もっと》も、お前が生れると間もなく別れた、私はお前の兄の新五郎だ、何卒《どうか》して其方《そち》に逢い度《た》いと思い居りしが、これも逢われる時節兄弟縁の尽きぬので、斯様《かよう》な処で逢うのは実に不思議な事で有った、私は深見の惣領新五郎と申す者でな」
三十六
新「ヘエ、成程鼻の高い好《い》い男子《おとこ》だ、眼の下に黒痣《ほくろ》が有りますか、おゝ成程、だが新五郎様と云う証拠が何か有りますか」
新五郎「証拠と云って別にないが、此の迷子札はお前伯父に貰ったと云うが、それは伯父ではない勘藏と云う門番で、それが私《わし》の弟を抱いて散り散《ぢ》りになったと云う事を仄《ほの》かに聞きました、其の門番の勘藏を伯父と云うが、それを知って居るより外《ほか》に証拠はない、尤も外に証拠物もあったが、永らく牢屋の住居《すまい》にして、実に斯様《
前へ
次へ
全520ページ中195ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング