ゃア其様《そん》な物はないか知らぬが、若《も》し花色裏の着物が有ったら一つ取って置いてお呉れよ」
上「それは取って置くとも」
妻「若しちょいと私に※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]《さ》せそうな櫛《くし》笄《こうがい》があったら」
上「それも承知や」
妻「漸々《よう/\》運が向いて来たねえ」
上「まあ酒を買《こ》うて」
と云うので是から楽酒《たのしみざけ》を飲んで喜んで寝まする。すると一番奥の長屋に一人者があって其処《そこ》に一人の食客《いそうろう》が居りましたが、これは其の頃|遊人《あそびにん》と云って天下禁制の裸で燻《くすぶ》って居る奴、
○「おい甚太《じんた》/\」
甚「ア、ア、ア、ハアー、ン、アーもう食えねえ」
○「おい寝惚けちゃアいけねえ、おい、起きねえか、エヽ静かにしろ、もう時刻は好《い》いぜ」
甚「何を」
○「何をじゃアねえ忘れちゃア仕様がねえなア、だから獣肉《もゝんじい》を奢《おご》ったじゃアねえか」
甚「彼《あ》の肉を食うと綿衣《どてら》一枚《いちめえ》違うというから半纒《はんてん》を質に置いてしまったが、
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