が、私《わたくし》は根津七軒町の富本豊志賀と申す師匠の処へ食客《いそうろう》に居りますと、豊志賀が年は三十を越した女でげすが、堅い師匠で、評判もよかったが、私が食客になりまして、豊志賀が私の様な者に一寸《ちょっと》岡惚《おかぼれ》をしたのでな」
 甚「いやな畜生だ惚気《のろけ》を聞くんじゃアねえ、女を殺した訳を云えよ」
 新「それから私《わたくし》も心得違いをして、表向《おもてむき》は師匠と食客ですが、内所《ないしょ》は夫婦同様で只ぶら/\と一緒に居りました、そうすると此処《こゝ》へ稽古に参ります根津の総門内の羽生屋と申す小間物屋の娘がその、私に何《なん》だか惚れた様に師匠に見えますので」
 甚「うん、それから」
 新「それを師匠が嫉妬《やきもち》をやきまして、何も怪しい事も無いのにワク/\して、眼の縁《ふち》へポツリと腫物《できもの》が出来まして、それが斯《こ》う膨《は》れまして、こんな顔になり其の顔で私の胸倉を取って悋気《りんき》をしますから居《い》られませんので、私が豊志賀の家《うち》を駈出した跡で師匠が狂い死《じに》に死にましたので、死ぬ時の書置《かきおき》に、新吉と夫婦になる
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