きましたが、斯様《かよう》な書置を他人に見せる事も出来ません、さればと申して、懐へ入れて居ても何《なん》だか怖くって気味が悪いし、何《ど》うする事も出来ませんから、湯灌の時に窃《そっ》とごまかして棺桶の中へ入れて、小石川|戸崎町《とさきまち》清松院《せいしょういん》と云う寺へ葬りました。伯父は、何《なん》でも法事供養をよく為《し》なければいかないから、墓参りに往《い》けよ/\と云うけれども、新吉は墓所《はかしょ》へ行《ゆ》くのは怖いから、成《なる》たけ昼間|往《ゆ》こうと思って、昼ばかり墓参りに往《ゆ》きます。八月二十六日が丁度|三七日《みなのか》で、其の日には都合が悪く墓参りが遅くなり、申刻《なゝつ》下《さが》りに墓参りをするものでないと其の頃申しましたが、其の日は空が少し曇って居るから、急ぎ足で参ったのは、只今の三時少し廻った時刻、寺の前でお花を買って、あの辺は井戸が深いから、漸《ようや》くの事で二つの手桶へ水を汲んで、両方の手に提《さ》げ、お花を抱えて石坂を上《あが》って、豊志賀の墓場へ来ると、誰《たれ》か先に一人拝んで居る者が在《あ》るから誰《たれ》かと思ってヒョイと見ると、羽
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