退《さが》っては暗くって仕様がねえ、提灯持は先へ出なよ」
新「伯父さん/\」
勘「なぜ然う続けて呼ぶよ」
新「伯父さん、師匠は全く私を怨んで来たのに違いございませんね」
勘「怨んで出るとも、手前《てめえ》考えて見ろ、彼《あれ》までお前《めえ》が世話になって、表向《おもてむき》亭主ではねえが、大事にしてくれたから、どんな無理な事があっても看病しなければならねえ、それをお前が置いて出りゃア、口惜《くやし》いと思って死んだから、其の念が来たのだ、死んで念の来る事は昔から幾らも聞いている」
新「伯父さん私は師匠が死んだとは思いません、先刻《さっき》逢ったら、矢張《やっぱり》平常《ふだん》着て居る小紋の寝衣《ねまき》を着て、涙をボロ/\翻《こぼ》して、私が悪いのだから元の様に綺麗さっぱりとあかの他人になって交際《つきあ》います、又月々幾ら送りますから姉だと思ってくれと、師匠が膝へ手を突いて云ったぜ、ワア」
勘「ア、何《なん》だ/\、エヽ胆《きも》を潰した」
新「ナニ白犬が飛出しました」
勘「アヽ胆を潰した、其の声は何だ、本当に魂消《たまげ》るね、胸が痛くなる」
と慄《ふる》えな
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