張でもぶら[#「ぶら」に傍点]でも何《なん》でも宜《い》いから、え、蝋燭《ろうそく》が無けりゃア三ツばかりつないで、え、箸を入れてはいけませんよ、焙《あぶ》ればようございます」
男「御免なさい」
トン/\。
勘「ヘエ、何方《どなた》でげす」
男「新吉さんは此方《こちら》ですか、新吉さんの声の様ですね、え、新吉さんかえ」
勘「ヘエ何方でげすえ、ヘエ…ねえ新吉、誰かお前の名を云って逢いたいと云ってるから明けねえ」
新「おやお出でなさい」
男「おやお出でじゃアねえ、新吉さん困りますね、病人を置いて出て歩いては困りますね、本当に何様《どんな》に捜したか知れない、時にお気の毒様なこと、お前さんの留守に師匠はおめでたくなってしまったが、何《ど》うも質《すじ》の悪い腫物《できもの》だねえ」
二十
新「何を詰らない事を、善六さん極《きま》りを云ってらア」
善「極りじゃアねえ」
新「そんな冗談云って、いやに気味が悪いなア」
善「冗談じゃアねえ、家内がお見舞に徃った処が、お師匠さんが寝てえると思って呼んで見ても答がねえので、驚いて知らせて来たから私も行《ゆ》き彦六
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