が、確《しっ》かりした助太刀を頼むが宜い、先方《さき》は立派な剣術遣い、殊《こと》に同類も有ろうから」
宗「はい親父の時に奉公をしたもので、今江戸で花車という強いお相撲さんが有りますから。其の人を頼みます積りで」
道「若《も》し其の花車が死んでいたら何《ど》うする、人間は老少不定《ろうしょうふじょう》じゃから、昨日《きのう》死にましたといわれたら何うする、人間の命は果敢《はか》ないものじゃが、あゝ仕方がない、往《い》くなら往けじゃが、首尾好く本懐を遂げて念が断《き》れたらまた会いに来てくれ」
と実子のような心持で親切に申しまする。
宗「これがお別れとなるかも知れません、誠にお言葉を背きまして相済みません」
道「いや/\念が断《き》れんと却《かえ》って罪障《つみ》になる、これは小遣に遣るから持って往《ゆ》け」
と、三年此の方世話をしたものゆえ実子のように思いまして、和尚は遣りともながるのを、強《た》ってというので、音助に言付け万事出立の用意が整いましたから立たせて遣り、漸《ようや》く五日目に羽生村へ着《ちゃく》致しましたが、聞けば家宅《うち》は空屋《あきや》に成ってしまい、作右衞門という老人《としより》が名主役を勤めており、多助は北阪《きたさか》の村はずれの堤下《どてした》に独身活計《ひとりぐらし》をしているというから遣って参り、
宗「多助さん/\、多助|爺《じい》やア」
多「あい、なんだ坊様か、今日は些《ち》とべえ志が有るから、銭い呉れるから此方《こっち》へ這入《へえ》んな」
宗「修行に来たんじゃアない、お前は何時《いつ》も達者で誠に嬉しいね」
多「誰だ/\」
宗「はいお前忘れたかえ、私《わし》は惣吉だアね、お前の世話に成った惣右衞門の忰の惣吉だよ」
九十五
多「おい成程えかくなったねえ、まア、坊様に成ったアもんだから些《ちっ》とも知んねえだ、能くまア来たあねえ」
と嬉し涙に泣き沈み漸々《よう/\》涙を拭いながら、
多「あゝ三年前にお前さまが宅《うち》を出て往《い》く時はせつなかったが、敵討だというから仕方がねえと思って出して上げたが後《あと》で思え出しては泣いてばかりいたが、作右衞門様の世話でもって、何《ど》うやら斯《こ》うやら取附いて此処《こゝ》にいやすが、お前様を訪ねてえっても訪ねられねえだが、お母様《ふくろさん
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