も若い時分にした悪事を考えますと身の毛がよだちますよ」
 尼「お前さん何をいうのです、若い時分などと云ってまだ若い盛りじゃアないか、是から罪を作らん様にするのだ」
 新「お母様《っかさん》、私《わたし》は真《しん》以《もっ》て改心して見ると生きては居られない程辛いから、私を貴方の弟子にして下さいな、外《ほか》に往き処《どこ》もないから、お前|様《さん》の側へ置いて下されば、本堂や墓場の掃除でもして罪滅しをして一生を送り度《た》いので、段々のお話で私は悉皆《すっかり》精神《たましい》を洗い、誠の人になりましたから、どうか私をお弟子にして下さいまし」
 尼「よくね、私の懴悔話を聞いて、一図《いちず》にアヽ悪い事をしたと云って、お前さんのような事を仰しゃるお方も有りますが、其の心持が永く続かないものですから、そんな事を云わなくっても、只アヽ悪い事をしたと思えば、其所《そこ》が善いので」
 新「お賤、お前とは不思義の悪縁と知らず、是まで夫婦になって居たけれ共、表向盃をしたという訳でもないから、夫婦の縁も今日限りとし、己は頭髪《あたま》を剃《す》って、お前のお母《っか》さんだが、己はお母さんとは思わない、己を改心させてくれた導きの師匠と思い、此のお比丘さんに事《つか》えて、生涯出家を遂《と》げる心に成ったから、もう己を亭主と思って呉れるな、己もまたお前を女房とは思わねえから、何卒《どうか》そう思って呉れ」
 賤「おい何をいうんだ、極りを云ってるよ、話を聞いた時には一図に悪い事をしたと思うが、少し経《た》つと直《じき》に忘れて仕舞うもの、一寸精進をしても、七日仕ようと思っても三日も経つともう宜かろうと喰《た》べるのが当前《あたりまえ》じゃアないか」
 新「今迄の魂の汚《よご》れたのを悉皆《すっかり》洗って本心になったのだから、もう己の傍《そば》へ寄って呉れるな」
 賤「おや新吉さん何をいうのだよお前どうしたんだえ」
 新「お前《めえ》はまア本当に………どうして羽生村なんぞへ来たんだなア」
 賤「新吉さん、お前《まえ》何をいうのだ、来たって、あゝいう訳で来たんじゃアないか、それが何《ど》うしたんだえ」
 新「お前《めえ》は何も解らねえのだ、アヽ厭《いや》だ、ふつ/\厭だ、どうぞ後生だから己の側へ寄ってくんなさんな」
 といわれてお賤は少しムッとした顔付になり、
 賤「あゝ厭ならお
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