「いゝじゃアありませんか二人でズーッと」
 隅「いけないよ、其様《そん》な事をして」
 富「それ、然《そ》ういうお堅いから二人で夫婦養子にどんな処へでも可《か》なり高《たか》のある処へ行けます、お隅さん」
 と何《なん》と心得違いしたか富五郎、無闇にお隅の手を取って髯《ひげ》だらけの顔を押付ける処へ、母が帰って来て、此の体《てい》を見て驚きましたから、傍《そば》にある麁朶《そだ》を取って突然《いきなり》ポンと撲《ぶ》った。
 富「これは痛い」
 母「呆れかえった奴だ」
 隅「よくお帰りでございまして」
 母「今|帰《けえ》って来たゞが、彼《あ》の野郎ふざけ廻りやアがって、富五郎|茲《こゝ》へ出ろ」
 富「ヘエ、これは恐入りました、どうも些《ちっ》ともお帰りを知らんで、前後忘却致し、どうも何《なん》とも誠にどうも、何《なん》で御打擲《ごちょうちゃく》ですか薩張《さっぱり》分りません」
 母「今見ていれば何《なん》だお隅にあの挙動《まね》は何だ、えゝ、厭がる者を無理にかじり付いて、髯だらけの面《つら》を擦《こす》り付けて、お隅をどうしようというだ、お隅は何《なん》だえ、惣次郎の女房という事を知らずにいるか、汝《われ》知っているか、返答ぶて」
 富「どうも、私《わたくし》前後忘却致し、酔っておりまして、はっというとお隅さんで、恐入りました、無暗《むやみ》に御打擲で血が出ます」
 母「頭ア打砕《ぶっくだ》いても構わねえだ、汝《われ》恩を忘れたか、此の夏の取付《とりつけ》に瓜畑へ這入《へえ》って瓜イ盗んで、生埋にされる処を、家《うち》の惣次郎が情け深《ぶけ》えから助けて、行《ゆ》く処もねえ者に羽織イ着せたり、袴《はかま》ア穿かして、脇へ出ても富さん/\といわれるは誰がお蔭か、皆《みんな》惣次郎が情深《なさけぶけ》えからだ、それを惣次郎の女房に対して調戯《からか》って縋付《すがりつ》いて、まア何《なん》とも呆れて物ういわれねえ、義理も恩も知らねえ、幾ら酔《よっ》ぱらったって親の腹へ乗る者ア無《ね》えぞ呆れた、酒は飲むなよ好《よ》くねえ酒癖だから廃《よ》せというに聴かねえで酔ぱらっては帰《けえ》って来《き》やアがって、只《たっ》た今|逐出《おいだ》すから出ろえ、怖《おっか》ねえ、お前の様な者ア間違《まちげえ》を出かします、こんな奴は只た今出て行《ゆ》け」
 富「お腹立様では何《な
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