無い、此様《こん》なになって死ぬのは誠に情ねえ訳で、何《ど》うして死んだかなア」
三「其様《そんな》に泣いたって仕様があるものか、命数が尽きれば仕方がねえ、其様に女々しく泣くな、男らしくもねえ、腹一杯親|同胞《きょうだい》に不孝をして苦労を掛けて是で先立つたア此様《こん》な憎い奴はねえ、憫然《かわいそう》とは思わない、悪《にく》いと思え、泣く事はねえ、泣くな」
與「泣くなって、泣いたって宜《よ》かんべえ、死んだ時でも泣かなきゃア泣く時はねえ、私《わし》い憫然でなんねえだよ、斯《こ》んな立派な兄《あに》さんがあっても、薬一服煎じて飲ませねえで憫然だと思うから泣くのだ、お前さんも我慢しずに泣くが宜《え》え」
三「まア水でも飲まして見ようか」
與「まだ水も何も飲ませねえのかえ」
三「オイ己《おれ》が水を飲ませるから其処《そこ》を押えて、首を斯《こ》うやって、固く成って居るからの、力一ぱい、なに腕が折れると、死んで居るから構やアしねえ、宜《い》いか、今水を飲ませるから、ウグ/\/\/\」
與「何だか云う事が分んねえ」
三「いけねえ、己が飲んでしまった」
與[#「與」は底本では「三」]「仕様がねえな、含《くゝ》んでゝ喋れば飲込むだ、喋らずに」
と漸《ようや》く三藏が口移しにすると、水が通ったと見えて、
累「ウム」
という。
三「アヽ與助、漸く水が通った」
與「通ったか、通れば助かります、お累様ア、確《しっ》かりして、水が通ったから確かりして、お累さん/\」
三「お累確かりしろ、兄《あに》さんが此処《こゝ》に附いて居るから確かりしろよ」
與「お累様確かりおしなさえよ、與助が此処へ参《めえ》って居りますから、お累様、確かりおしなさえよ」
累「ア…………」
三「其方《そっち》へ退《ど》きなさい、頭を出すから、アヽ痛い」
與「大丈夫《でえじょうぶ》己来たからよう、アヽ好《い》い塩梅《あんべえ》だ気が付いた、アヽ……」
三「何《なん》だ手前《てめえ》気が付きゃアそれで好いや、気が付いて泣く奴があるものか」
與「嬉し涙で、もう大丈夫《でえじょうぶ》だ」
三「もう一杯飲むかえ、さア/\水を飲みなさい」
四十二
累「ハイ……気が付きました、何卒《どうぞ》御免なされて下さい」
三「私が余《あんま》り小言を云ったのは悪うございまし
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