《わらいがお》を見て私も死度《しにと》うございます、何卒お護《まも》りなすって下さいまし、と神様や仏様に無理な願掛《がんがけ》をなさるも、お前が可愛いからで、親の心子知らずと云うのはお前の事で、さア今日は新吉とフッヽリ縁を切ります諦めますとお前が云えば、彼様な奴だから三十両か四十両の端金《はしたがね》で手を切って、お前を家《うち》へ連れて行って、身体さえ丈夫になれば立派な処へ縁附ける、左《さ》も無ければ別家《べっけ》をしても宜《い》い、彼奴《あいつ》に面当《つらあて》だからな、えゝ、今日は諦めますと云わなければなりませんよ、さア諦めたと云いなさい、えゝ、おい、云えないかえ、今日諦めなければ私はもう二度と再び顔は見ません、もう決して足踏《あしぶみ》は致しません、もう兄妹の是が別れだ、外《ほか》に兄弟があるじゃアなし、お前と私ばかり、お前亭主を持たないうち何《なん》と云った、私が他《わき》へ縁付きましても、子というは兄《あに》さんと私ぎりだから、二人でお母様に孝行しようと云ったじゃアないか、して見れば親の有難い事も知っているだろう、さア、お前の身が大事だからいうのだよ、返答が出来ませんかよ、えゝお累、返答しなければ私は二度と再び来ませんよ」

        四十一

 累「はい/\」
 と利かない手を漸《やっ》と突いてガックリ起上り、兄三藏の膝の上へ手を載せて兄の顔を見る眼に溜《たま》る涙の雨はら/\と膝に翻《こぼ》れるのを、
 三「これ/\たゞ泣いていては却《かえ》って病《やまい》に障るよ」
 累「はいお兄様《あにいさま》どうも重々《じゅう/\》の不孝でございました、まア是迄御丹精を受けました私《わたくし》が、お兄様のお言葉を背きましては、お母様《っかさま》へ猶々《なお/\》不孝を重ねまする因果者、此の節のように新吉が打って変って邪慳では、迚《とて》も側には居られません、少しばかり意見がましい事を申せば、手にあたる物でぶち打擲致しますから、小児《あか》が可愛《かわゆ》くないかと膝の上へ此の坊を載せますと、エヽうるせえ、とこんな病身の小児を畳の上へ放り出します、それほど気に入らぬ女房なれば離縁して下さい、兄の方へ帰りましょうと申しますと、男の子は男に付くものだから、此の與之助は置いて行《ゆ》けと申します、彼様《あん》な鬼の様な人の側へ此の坊を置きましては、見す/\見殺
前へ 次へ
全260ページ中112ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング