嫌いなので、ド、何《ど》んな顔に」
 累「はい此の間火傷を致しましてね」
 と恥かしそうに行燈《あんどう》の処へ顔を出すのを、新吉が熟々《つく/″\》見ると、此の間法蔵寺で見たとは大違い、半面火傷の傷、額《ひたえ》から頬へ片鬢《かたびん》抜上《ぬけあが》りまして相が変ったのだから、あっと新吉は身の毛立ちました。
 新「何《ど》うして、お前まア恐ろしい怪我をして、エヽ、なに何《なん》だか判然《はっきり》と云わなければ、もっと傍へ来て、え、囲炉裡《いろり》へ落ちて、何うも火傷するたって、何うも恐ろしい怪我じゃアないか、まアえゝ」
 と云いながら新吉は熟々と考えて見れば、累が淵で殺したお久の為には、伯母に当るお累の処へ私が、養子に来る事になり、此の間まで美くしい娘が、急に私と縁組をする時になり、此様《こん》な顔形《かおかたち》になると云うのも、やっぱり豐志賀が祟《たゝ》り性《しょう》を引いて、飽くまでも己《おれ》を怨《うら》む事か、アヽ飛んだ処へ縁付いて来た、と新吉が思いますると、途端に、ざら/\と云う、屋根裏で厭《いや》な音が致しますから、ヒョイと見ると、縁側の障子が明いて居ります、と其の外は縁側で、茅葺《かやぶき》屋根の裏に弁慶と云うものが釣ってある。それへずぶりと斜《はす》に※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]《さ》して有るは草苅鎌、甚藏が二十両に売付けた鎌を與助と云う下男が磨澄《とぎすま》して、弁慶へ※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]して置いたので、其の鎌の処へ、屋根裏を伝わって来た蛇が纏《まと》い付き、二三度|搦《から》まりました、すると不思議なのは蛇がポツリと二つに切れて、縁側へ落ると、蛇の頭は胴から切れたなりに、床《とこ》の処へ這入って来た時は、お累は驚きまして、
 累「アレ蛇が」
 と云う。新吉もぞっとする程身の毛立ったから、煙管《きせる》を持って蛇の頭《かしら》を無暗《むやみ》に撲《う》つと、蛇の形は見えずなりました。怖い紛《まぎ》れにお累は新吉に縋《すが》り付く、その手を取って新枕《にいまくら》、悪縁とは云いながら、たった一晩でお累が身重になります。これが怪談の始《はじめ》でございます。

        三十三

 新吉とお累は悪縁でございますが、夫婦になりましてからは、新吉が
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