訳になって見れば、己《おれ》も頼まれゝば後《あと》へも退《ひ》けねえ訳だから、己《おれ》が五十石の田地《でんじ》をぶち放っても此の話を着けねばなんねえ訳に成ったが其の男の事に付いて参《めえ》っただ」
甚「ヘエーそうで、其の男と云うなア身寄でも親類でもねえ奴ですが、困るてえから私《わっち》の処に食客《いそうろう》だけれども、何を不調法しましたか、旦那堪忍しておくんなえ、田舎珍らしいから、柿なんぞをピョコ/\取って喰いかねゝえ奴だが、何《なん》でしょうか生埋《いきうめ》にするなどというと、私《わっち》も人情として誠に困りますがねえ、何を悪い事をしたか、何《どう》云う訳ですえ」
作「誰《だり》が柿イ取ったて」
甚「食客が柿を盗んだんでしょう」
作「柿など盗んだ何《なん》のと云う訳でねえ、そうでねえ、それ、お前《めえ》知って居るが、三藏どんの妹娘《いもとむすめ》は屋敷奉公して帰《けえ》って来て居た処、お前等《めえら》ア家《うち》のノウ、其の若《わけ》え男を見て、何処《どこ》かで一緒になったで口でもきゝ合った訳だんべえ、それでまア娘が気に、彼《あ》ア云う人を何卒《どうか》亭主《ていし》に為《し》たいとか内儀《かみさん》になりてえとか云う訳で、心に思っても兄《あに》さまが堅《かて》えから八釜《やかま》しい事云うので、処から段々胸へ詰って、飯《まゝ》も食べずに泣いてばかり居るから、医者どんも見放し、大切《だいじ》の一人娘だから金えぶっ積んでも好いた男なら貰って遣《や》りてえが、他《ほか》の者では頼まれねえが、作右衞門どん行ってくれと云う訳で、己《おれ》が媒妁人役《なこうどやく》しなければなんねえてえ訳で来ただ」
甚「そんなら早くそう云ってくれゝば宜《い》いに、胆《きも》を潰《つぶ》した、私《わっち》は柿でも盗んだかと思って、そうか、それは有難《ありがて》え、じゃア何《なん》だね、妹娘が思い染めて恋煩《こいわずら》いで、医者も見放すくれえで、何《ど》うでも聟《むこ》に貰おうと云うのかね、是は有難え、新吉出や、ア此処《こゝ》へ出ろ、ごうぎな事をしやアがった、此処へ来や、旦那是は私の弟分《おとゝぶん》で新吉てえます、是は作右衞門さんと云うお方でな、名主様から三番目に坐る方だ、此の方に頭を押えられちゃア村に居憎《いにく》いやア、旦那に親眤《ちかづき》になって置きねえ」
新「ヘ
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