な「有体ッたって別に無《ね》えだ、墓参りに行って年頃二十二三になる好《い》い男が来て居て、お前《めえ》さん何処《どこ》の者だと云ったら江戸の者だと云って、近処《きんじょ》に居る者だがお墓参りして無尽|鬮引《くじびき》の呪《まじね》えにするって、エー、雨降って来たから傘借りてお累さんと二人手え引きながら帰《けえ》って来て、お累さんが云うにゃア、おせな彼様《あん》な好《い》い男は無《ね》いやア、彼様な柔《やさ》しげな人はねえ、己《おれ》がに亭主《ていし》を持たせるなれば彼《あ》ア云う人を亭主に持度《もちた》いと云って、内所で云う事が有ったけえ、其の中《うち》に火傷してからもう駄目だ彼《あ》の人に逢いたくもこんな顔になっては駄目だって、それから飯も喰えねえだ」
 三「然《そ》うか何《ど》うも訝《おか》しいと思った、様子がナ、汝《てめえ》に云われて漸《ようや》く分った」
 せな「あれ、横着者め、お累様云わねえのか」
 三「なにお累が云うものか」
 せな「彼《あれ》だアもの、累も云ったから汝《てめえ》も云えってえ、己に云わして己云ったで事が分ったてえ、そんな事があるもんだ」
 三「騒々しい、早く彼方《あっち》へ往けよ」
 とこれから村方に作右衞門と云う口利《くちきゝ》が有ります、これを頼んで土手の甚藏の処へ掛合いに遣《や》りました。

        三十一

 作「御免なせえ」
 甚「イヤお出でなせえ」
 作「ハイ少し相談ぶちに参《めえ》りましたがなア」
 甚「能《よ》くお出《いで》なせえました」
 作「私《わし》イ頼まれて少し相談ぶちに参《めえ》ったが、お前等《めえら》の家《うち》に此の頃|年齢《としごろ》二十二三の若《わけ》え色の白《しれ》え江戸者が来て居ると云う話、それに就《つ》いて少し訳あって参《めえ》った」
 甚「左様で、出ちゃアいけねえ引込《ひっこ》んで居ねえ」
 新吉は薄気味が悪いから蒲団の積んで有る蔭へ潜り込んで仕舞いました。
 甚「ヘエ、な、何《なん》です」
 作「エヽ、今日少しな、訳が有って三藏どんが己《おら》が処《とけ》え頭を下げて来て、偖《さて》作右衞門どん、何《ど》うも他《た》の者に話をしては迚《とて》も埓《らち》が明かねえ、人一人は大事な者なれども、何うも是非がねえから無理にも始末を着けなければなんねえから、お前等《めえら》をば頼むと云うまアーづ
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