、此四品《このよしな》で。「左様《さやう》でげすな、四品《よしな》で七|円《ゑん》位《ぐらゐ》では如何《いかゞ》でげせう。士「ヤ、怪《け》しからぬことを云《い》ふ、釜《かま》ばかりでもお前《まへ》十五|両《りやう》で買《か》うたのだぜ。「併《しか》し此節《このせつ》は門並《かどなみ》道具屋《だうぐや》さんが殖《ふえ》まして、斯様《かやう》な品《しな》は誰《だれ》も見向《みむき》もしないやうになりましたから、全然《まるで》値《ね》がないやうなもんでげす、何《ど》うも酷《ひど》く下落《げらく》をしたもんで。士「成程《なるほど》ハー左様《さやう》かね、夫《それ》ぢや宅《うち》へ置《おい》ても詰《つま》らぬから持《もつ》てつて呉《く》れ、序《ついで》に其所《そこ》に大きな瓶《かめ》があるぢやらう、誠に邪魔《じやま》になつて往《い》かぬから夫《それ》も一|緒《しよ》に持《もつ》て行《ゆ》くが宜《よ》い。などと無代《たゞ》遣《や》つたり何《なに》かいたし誠にお品格《ひんかく》の好《よ》い事でござりました。是《これ》は円朝《わたくし》が全く其《そ》の実地《じつち》を見て胆《きも》を潰《つぶ》したが、何《なん》となく可笑味《をかしみ》がありましたから一|席《せき》のお話に纏《まと》めました。処《ところ》が当今《たうこん》では皆《みな》門弟等《もんていら》や、孫弟子共《まごでしども》が面白《おもしろ》をかしく種々《いろ/\》に、色取《いろどり》を附《つ》けてお話を致《いた》しますから其方《そのはう》が却《かへつ》てお面白《おもしろ》い事でげすが、円朝《わたくし》の申上《まうしあ》げまするのは唯《たゞ》実地《じつち》に見ました事を飾《かざ》りなく、其盤《そのまゝ》お取次《とりつぎ》を致《いた》すだけの事でござります。小川町辺《をがはまちへん》の去《さ》る御邸《おやしき》の前《まへ》を通行《つうかう》すると、御門《ごもん》の潜戸《くゞりど》へ西《にし》の内《うち》の貼札《はりふだ》が下《さが》つてあつて、筆太《ふでぶと》に「此内《このうち》に汁粉《しるこ》あり」と認《したゝ》めてあり、ヒラリ/\と風で飜《あほ》つて居《を》つたから、何《なん》ぞ落語《はなし》の種子《たね》にでもなるであらうと存《ぞん》じまして、門内《なか》へ這入《はい》つて見ましたが、一|向《かう》汁粉店《しるこや》らし
前へ
次へ
全5ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング