の位《くらゐ》あがるかしれねえとおもふのさ。乙「そこで布袋《ほてい》さんは。甲「御存生《ごぞんじやう》なら川田《かはだ》小《こ》一|郎《らう》君《くん》だね、腹《はら》の膨《ふく》れてゐる処《ところ》から体格《かつぷく》と云ひ、ニコヤカなお容貌《かほつき》と云ひ、頸《えり》が二重《ふタヘ》に成《な》つてゐる様子《やうす》はそつくりだね、何《なに》しろもう神《かみ》になつちまつて仕《し》やうがない、目下《もくか》では大倉《おほくら》喜《き》八|郎《らう》君《くん》さ。乙「ウム何《ど》う云《い》ふ処《ところ》で。甲「ハテ、愛嬌《あいきやう》もありなか/\大腹《おほつぱら》な仁《ひと》です、布袋和尚《ほていをしやう》に縁《えん》があるのは住居《すまゐ》が悉皆《みな》寺《てら》です、殊《こと》に彼程《あれほど》に成《な》るまでには、跣足《はだし》で流れ川を渡《わた》る様《やう》な危《あやふ》い事も度々《たび/\》有《あ》ツたとさ、遊ぶ時には大袋《おほぶくろ》を広《ひろ》げる事もあり、芸妓《げいぎ》も極《ご》くお酌《しやく》のから子供を多くお呼び被成《なさ》るのがお好《すき》だとさ。乙「時に困るのは弁天《べんてん》でせう。甲「まア富貴楼《ふつきらう》のお倉《くら》さんかね、福分《ふくぶん》もあり、若い時には弁天《べんてん》と云《い》はれた位《くらゐ》の別嬪《べつぴん》であつたとさ、宅《たく》は横浜《よこはま》の尾上町《をのへちやう》です、弁天通《べんてんどほ》りと羽衣町《はごろもちやう》に近《ちか》いから、それに故人《こじん》の御亭主《ごていしゆ》は亀《かめ》さんと云《い》ふからさ。乙「だツて紳士程《しんしほど》金満家《きんまんか》にもせよ、実《じつ》は弁天《べんてん》も男子《だんし》に見立《みたて》たいのさ。と云《い》つて居《ゐ》ると背後《うしろ》の襖《ふすま》を開《あ》けて。浅「僕《ぼく》が弁天《べんてん》です、僕《ぼく》が弁天《べんてん》さ。甲「おや貴方《あなた》は浅田正文君《あさだせいぶんくん》ではありませんか、シテ貴方《あなた》が何《ど》ういふ理由《わけ》で。浅田「ハテ僕《ぼく》は池《いけ》の端《はた》に居《ゐ》るからぢや。
底本:「明治の文学 第3巻 三遊亭円朝」筑摩書房
2001(平成13)年8月25日初版第1刷発行
底本の親本:「定本 円朝全集 巻
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