ゥますと、舟がございます。只今申上げましたカノウ[#「カノウ」に傍点]と申しまするは舟のことであります。これは丸木で彫上《ほりあ》げました物で、長さは凡《およ》そ三間《さんげん》、幅は二尺五寸ぐらいあります。只今考えて見ますと、大阪の博物館にあります、古風の独木舟《まるきぶね》のようなもので、何《なん》の木か一向分りませぬ。舟といえば舟、人の二人も乗りますると、外《ほか》に何も置く処はございませぬ。さア何《ど》うか此の舟へ乗せて連れて往ってくれと申しますと、島人は何《なん》だか未《ま》だ文治を疑《うたぐ》って居ります様子、飛乗る途端に文治を陸《おか》へ突き放し、自分一人が飛乗りまして漕ぎ出そうと致します。併《しか》し海岸は遠浅で、岩角が沢山有りますから思うように舟が出ませぬ。是幸いに文治は突然《いきなり》海へ飛込み、カノー[#「カノー」に傍点]の小縁《こべり》に取付きました。その手を件《くだん》の島人が木刀を振上げて打とうと致しますから、文治は手早く其の手を取って押え、其の儘舟へ飛上りまして、
文「やい最前から是ほど申しても分らぬか、いかに言葉が碌々《ろく/\》通ぜずとも、あれ程手を
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