とやく》引受《ひきうけ》の祝いとして、一同の者へ赤飯《せきはん》を振舞ってやるぞ」
いや罪人どもは赤飯と聞いて悦んだの何《なん》の。
一同「へえ/\お有難う存じます、旦那様、寿命が延びます、辱《かたじけ》なく存じます」
文「一同今日は是にて引取りませえ」
とそれ/″\役人へ引渡しました。いやもう囚人《しゅうじん》どもは明日《あす》の赤飯を楽しみに喜び勇んで引取りました。思えば罪のないものでございます。此のお瀧と申します婦人はもと八丁堀の碁打《ごうち》阿部忠五郎という者の娘でございます。是にてお話が一寸《ちょっと》後《あと》へ戻ります。
十八
えゝ、大伴蟠龍軒は丁度秋のことでございますが、自分の屋敷に居りまして、手を拍《う》ち、
蟠「これ/\お瀧か、一寸《ちょっと》お出《い》で」
瀧「はい、何《なん》ぞまた旨い仕事でもありますか」
蟠「いやお瀧今日は御殿女中になって貰わにゃアならん」
瀧「おや、御殿女中とは俄《にわか》の出世だねえ、まア」
蟠「旨くやると今日こそ金になるぞ」
瀧「そりゃア有難いね」
蟠「緑町《みどりちょう》の口入屋の婆《ばゝ》アを頼んで置いたが、髪は奥女中の椎茸髱《しいたけたぼ》に結《ゆ》ってな、模様の着物も金襴《きんらん》の帯も或る屋敷から借りて置いた、これ/\安兵衞、緑町の婆アが来たら是れへ通せ」
安「へえ、婆アは先刻《さっき》から仲の口で独語《ひとりごと》を言ったり居眠りをしたり、欠伸《あくび》の十もした時分で」
蟠「そうか、此処《こちら》へ通せ、おゝ婆アか、久し振《ぶり》だな、何時《いつ》も達者で結構々々、何《ど》うだ近頃は金儲《かねもうけ》でも有るかな」
婆「いゝえ、此の頃じゃア金儲けどころじゃアございません、不景気なせいか田舎から奉公人が皆無《かいむ》出て来ませんし、また口も好《よ》い口がございませんで困り切って居ります、私《わたくし》どもで此の商売を始めてから斯《こ》んな商売の閑《ひま》なことはござんせんねえ」
蟠「時に婆ア、手前《てめえ》は始終屋敷|方《がた》へ奉公人を入れて居《お》るが、大名や旗下《はたもと》へ女を出すにゃア、髪はどんな風に結うかな、定めしそう云う女中の髪ばかり結う者もあろうな」
婆「そうね、只の髪と違って御殿女中の椎茸髱は六《むず》かしいんですよ、幸い此の婆アは年来結いつけ
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