いるのだ」
主「えっ……」
林「この親爺、何処《どこ》までとぼける積りだ、えゝ面倒だ、金藏《きんぞう》踏ん込《ご》め」
金「やい友之助、御用だ」
主「もし/\親分え、そんな無慈悲な事を為すっちゃア困るじゃアございませんか、友之助は身体中|疵《きず》だらけでございますぜ」
林「うむ、少しは疵も付いたろう、自業自得《じごうじとく》だ、誰を怨《うら》むところがあるか、神妙にお縄を頂戴しろえ、これ友之助、大切《たいせつ》な御用だぞ、上《かみ》へお手数《てすう》の掛らねえように有体《ありてい》に申上げろよ」
友之助は何《なん》の為か更に合点《がてん》が行《ゆ》かず、呆気《あっけ》に取られて居りますと、林藏は屹《きっ》と睨《にら》み付けて、
林「やい友之助、貴様は十五日の晩には何処《どこ》にいた」
主人は横合《よこあい》から、
主「親方、大切な御用とは何《ど》ういう筋かは知りませぬが、友さんは十四日の夕景、蟠龍軒一味の者にさん/″\な目に遇いましてな、可愛相《かわいそう》に身体も自由にならないで、私方《わたくしかた》へ泊りました、で、十五日には外へも出ませず、終日《いちんち》此処《こゝ》にうむ/\呻《うな》りながら寝て居りました」
林「黙れ、貴様に尋ねるのじゃアねえ、これ友之助、貴様は十四日は割下水の蟠龍軒の屋敷で、少しばかり打擲《ちょうちゃく》されたのを遺恨に思って、十五日の晩に其の仕返しを為《し》ようと云う了簡《りょうけん》で、蟠龍軒の屋敷へ切込《きりこ》んだろうな」
友之助は恟《びっく》り首を擡《もた》げて、
友「なゝなゝ何を云いなさる」
林「いやさ友之助、どうせ天の網を免《のが》れる訳にゃアいかねえ、あの手際《てぎわ》は貴様一人の仕業じゃアあるめえの、相手は何者だ、男らしく有体に申上げた其の上でお慈悲を願うが宜《よ》いぞ、己《おれ》たちも悪くは計らわねえ、ぐず/\すると却《かえ》って貴様の為にならねえぞ」
友之助は怪訝《けゞん》な面持《おももち》にて、
友「へえ、あの蟠龍軒めが何《ど》うぞしましたか」
林「友、しらばっくれるな、あの時アたしか三人だったなア」
友「あなたの仰しゃることは何が何《なん》だか一向分りませんが」
林「ふむゝ、貴様は往生際《おうじょうぎわ》の悪い奴だな、よし此の上は手前《てめえ》の身体に聞くより外《ほか》はねえ
前へ
次へ
全111ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング