藏は歯噛《はがみ》をなして居りましたが、最早|詮方《せんかた》がないと諦め、平伏して、
大「恐れ入ってござる」
數「おゝ、恐れ入ればそれで宜しい、お秋の方も剃髪《ていはつ》させ、国へ押込める積《つもり》だ、さ書け/\」
大「只今書きまする」
と云いながら後《あと》へ退《さが》るから、岩越という柔術家《やわらとり》が万一《もし》逃げにかゝったら引倒して息の根を止めようと思って控えて居ります。後へ退って大藏が硯《すゞり》を引寄せて震《ふる》えながら認《したゝ》めて差出す。
數「爪印を押せ、其処《そこ》へ」
大「はっ」
と爪印を捺《お》して福原數馬の前へ差出し、
大「重々心得違い、是《こ》れにて宜しゅうございますか、御披見《ごひけん》下さい」
數「其の方の手跡《しゅせき》だから宜しい、さ是から庭へ出て敵討《かたきうち》だ/\」
と云うと大藏は耐《こら》えかねて小刀《しょうとう》を引抜くが早いか脇腹へ突込《つきこ》んで引廻しました。
祖「汝《おの》れ切腹致したな」
と祖五郎が飛掛って二打三打斬付け、遂《つい》に仇《あだ》を討遂《うちおお》せて、直《すぐ》にお屋敷へお届けに相成り、とうと
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