きや》お駒《こま》というのを汁粉屋赤飯《しるこやおこわ》さ」
喜「前《さき》に本文《ほんもん》を断《ことわ》って後《あと》から云うのは可笑しい」
岩越「手前が一つ洒落ようかの」
五「岩越さま、あなた様のお洒落は」
岩「手前は考えたが余程むずかしいて、これはムヽウ…待ってくれ、えー阿部川餅《あべかわもち》というのが有るの」
五「へえ/\ございます」
岩「一つ八文で」
五「阿部川、へい、一つは八文で」
岩「あべ川の八銭では本当の直《ね》だというのは何うだ」
五「へえー、変なお洒落で、それは何う云う訳なんで」
岩「姉川《あねかわ》の合戦《かっせん》、本多《ほんだ》が出たというのだ」
五「それは余りお固いお洒落でげすな、私《わたくし》が洒落ましょう、斯ういうのは何うでございます、大黒様が巨燵《こたつ》に※[#「火+共」、第3水準1−87−42]《あた》ってるのでございます、大黒|暖《あった》かいと」
數「うん、成程是は分った、大福|暖《あった》かいか」
五「御家老様の御意に入《い》りましたか」
數「私《わし》が最《も》う一つ洒落ようか、是は何うだの、松風は固い岩おこしは柔らかいと云うのは」
五「へえ、それは何ういう訳で」
數「松蔭は堅い男、岩越は柔術家《やわらとり》」
五「へえ成程中々ちょっくら分りませんが誠に恐入りました事で、早くお三味線を」
とお座付《ざつき》が済み、後《あと》は深川の端唄《はうた》で賑《にぎや》かにやる大分興に入《い》った様子、御家老も六十|近《ぢか》いお年で、初めて斯ういう席に臨みましたので快く大分に召上りました。
數「お前のお蔭で私《わし》は斯様《こん》な面白い事に逢ったのは初めてだ、実に堪《たま》らんな、又《ま》た其の中《うち》来たいものだ」
大「何うか御在府中御遠慮なくおいで下されば、清左衞門は如何《いか》ばかりの悦びか知れません、芸者は孰《どれ》がお気に入りました」
數「皆|宜《よ》いの、其の中《うち》にも彼《あれ》が好《よ》いの、小まんに雛吉か」
大「彼《あれ》が御意に入りましたら、今度はお相手に前々《ぜん/″\》から頼み置きまして、呼寄せるように致しましょう」
數「それは誠に辱《かたじけ》ない、大きに酔うたな、殿様は御病気での」
大「へえ/\私《わたくし》も大きに心配を致して居ります」
數「併《しか》し私《わし》が顔を御覧があってから、
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