は図らず御面会を致しました、手前は松蔭大藏で……好《よ》い折柄、此の後とも御別懇に……御家老|此《こ》れは濱名左傳次と申す者で、小役人でございましたが、図らず以上に仰付けられ、今日《こんにち》は何うかお目通りを致しまして、何かのお話を承われば身の修行だと申して居ります、武骨ではござるが洒落《しゃれ》た口もきゝ、皺枯《しゃがれ》っ声で歌を唄い、面白い男ゆえお目をお掛け遊ばして、何分お引立を」
數「はい/\、中々様子の好《よ》い男、なれども近い処だと宜《よ》いがの、上屋敷までは遠いから、どうか些《ちっ》と早く帰りたいがの」
大「いえ、今晩は小梅のお中屋敷へ御一泊遊ばしては如何《いかゞ》、寺家田《じけだ》の座敷が手広でござる、彼《あれ》へ御一泊遊ばしますように、是から虎の門までお帰りになっては余り遅うなりますから」
數「それは宜かろう」
大「じゃア早く/\」
と是からお吸物に結構な膳椀で、古赤絵《ふるあかえ》の向付《むこうづ》けに掻鯛《かきだい》のいりざけのようなものが出ました。続いて口取《くちとり》焼肴《やきざかな》が出る。数々料理が並ぶ。引続いて出て来ましたのは深川の別嬪《べっぴん》でございます。
大「さ、これへ」
芸「今日《こんにち》は」
數「いや/\大勢呼んだの」
大「さ、これへ来てお酌を、大夫様《たいふさま》から」
芸「へえ、大夫様お酌をいたしましょう」
數「いや成程これは綺麗、あい/\、成程松蔭年を老《と》っても酌はたぼと云って幾歳《いくつ》になっても婦人は見て悪くないもんだの、むゝう、中々どうも……何《なん》てえ名だなに、小玉か成程、どんずり奴《やっこ》の男がいる、あれは何だ」
幇間「えゝ手前は鳥羽屋五蝶と申します幇間《たいこ》で」
數「ほゝう、なに太鼓を叩くか」
五「いえ、只口で叩きます」
數「口で太鼓を…唇でかえ」
五「いえ、なに、太鼓持で、えへゝゝ」
數「うん成程、口軽《くちがる》なことをいう、幇間《ほうかん》か、成程聞いていた、中々面白い頭だの」
五「へゝゝ、どうも未《ま》だどんずり奴《やっこ》でございます」
數「太皷持の頭は、皆《みな》此様《こん》なかえ」
五「皆《みんな》お揃いと云う訳ではございませんが、自然と毛が薄くなりましたので」
數「いや形が変って妙だ、幇間《たいこもち》は口軽だというが、何か面白いことを云いなさい」
五「これは恐入りまし
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