/\とごまかすてえ事を聞いて居りますよ」
村「開けて見ようかの」
定「開けて御覧遊ばせよ」
村「面白いことが書いてあるだろうの」
定「屹度《きっと》惚気《のろけ》が種々《いろ/\》書いてありましょうよ」
悪いようだが封じが固いだけに、尚《な》お開けて見たくなるは人情で、これから開封して見ますと、女の手で優しく書いてあります。
村「…文《ふみ》して申上《もうしあげ》※[#「まいらせそろ」の草書体、426−5]…、極《きわ》っているの」
定「へえ、それから」
村「…益々御機嫌|能《よく》御暮《おくら》し被成候《なされそうろう》御事《おんこと》蔭ながら御嬉《おんうれ》しく存じ上《あげ》※[#「まいらせそろ」の草書体、426−7]」
定「定文句《じょうもんく》でございますね、併《しか》し色男の処へ贈る手紙にしちゃア改《あらたま》り過ぎてるように存じますね」
村「然《そ》うだの、左候《さそうら》えば私《わたくし》主人松蔭事ス……神原四郎治と申合せ渡邊様を殺そうとの悪だくみ……おや」
定「へえ……何ういう訳でございましょう」
村「黙っていなよ、……それのみならず水飴の中へ毒薬を仕込み、若殿様へ差上候よう両人の者|諜《しめ》し合せ居り候を、図らず私《わたくし》が立聞致し驚き入り候」
定「呆れましたね、誰でございますえ」
村「大きな声をおしでないよ、世間へ知れるとわるいわ……一大事ゆえ文に認《したゝ》め差上候わんと取急ぎ認め候え共、若《も》し取落し候事も有れば、他《た》の者の手に入《い》っては尚々お上《かみ》のために相成らずと心配致し、袷《あわせ》の襟[#「襟」は底本では「縫」]へ縫込み差上候間、添書《そえしょ》の通りお宅にてこれを解き御覧の上渡邊様方に勤め居り候|御兄様《おあにさま》へ此の文御見せ内々《ない/\》御重役様へ御知らせ下され候様願い上《あげ》※[#「まいらせそろ」の草書体、427−1]、申上度事《もうしあげたきこと》数々|有之《これあり》候え共取急ぎ候まゝ書残し※[#「まいらせそろ」の草書体、427−2]尚《な》おお目もじの上|委《くわ》しく可申上候《もうしあげべくそうろう》、芽出度《めでたく》かしく、父上様兄上様、菊…と、……菊というのは何かの、彼《あ》の新役の松蔭の処に奉公していた女中は菊と云ったっけかの」
定「私《わたくし》は存じませんよ」
村「松蔭の家《うち
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