こ》まりました」
秋「源兵衞、毒虫を入れた水飴は大概もう仕上げてあるかの」
源「へえ、明後日《あさって》は残らず出来ます」
喜「明後日《あさって》出来る……よし宜く知らせてくれた辱《かたじけ》ない、源兵衛手前に何《なん》ぞ望みの物を取らしたく思う、持合せた金子も少ないが、是はほんの手前が宅への土産に何ぞ買って行ってくれ、私《わし》が心ばかりだ」
源「何う致しまして、私《わたくし》がこれを戴きましては」
秋「いや/\遠慮をせずに取って置いてくれ、就《つい》てはの、源兵衞大概此の方《ほう》に心当りもある、手前に頼んだ侍の名前は、これ誰が頼んだえ」
源「へえ、是だけは、それを言えば斬ると仰しゃいました、へえ、何うかまア種々《いろ/\》そのお書物《かきもの》の中へ、私《わたくし》にその、血で爪印をしろと仰しゃいましたから、少し爪の先を切りました」
秋「左様か、云っては悪いか、併《しか》し源兵衞|斯《こ》う打明けてしまった事じゃから云っても宜かろう」
源「何卒《どうぞ》それだけは御勘弁を」
秋「云えんかえ」
源「へえ、何うもそれは御免を蒙《こうむ》ります」
秋「併し源兵衞、是までに話を致して、依頼者の姓名が云えんと云うのは訝《おか》しい、まだ手前は悪人へ与《く》み致して居《お》るように思われる、手前が云わんなら私《わし》の方で云おうか」
源「へえ」
秋「神原五郎治兄弟か、新役の松蔭かな」
 源兵衞は仰天して、
源「よ好《よ》く御存じさまで」

        四十二

 喜一郎は態《わざ》と笑《えみ》を含みまして、
秋「何うも其辺《そこら》だろうと鑑定が附いていた、ま宜しいが、彼《か》の松蔭並びに神原兄弟の者はなか/\悪才に長《た》けた奴ゆえ、種々《いろ/\》罠をかけて、私《わし》が云ったことを手前に聞くまいものでもないが、手前決して云うな」
源「何う致しまして、云えば直《す》ぐに私《わたくし》が殺されます、貴方様も仰しゃいませんように」
秋「私《わし》は決して云わん、首尾好《しゅびよ》く悪人を見出《みだ》して御当家安堵の想いを為すような事になれば、何うか願って手前に五人扶持も遣《や》りたいの」
源「何う致しまして、悪人へ与《く》み致しました罪で、私《わたくし》はお手打になりましても宜しいくらいで、私は命さえ助かりますれば、御扶持は戴きませんでも宜しゅうございます、お出入りだ
前へ 次へ
全235ページ中195ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング