》る、その水飴を上げる処の出入町人は手前じゃから、手前の処で製造して水飴が上《あが》る、其の水飴を召上って若《も》し御病気でも重《おも》るような事があれば、手前が水飴の中へ毒を入れた訳ではあるまいけれども、手前が製した水飴を召上ったゝめに病気が重り、手前が頼んで斑猫を捕《と》らしたという事実がある上は、左様な訳ではなくても、手前が水飴の中へ毒虫でも製し込んで上《かみ》へ上げはせんかと、手前に疑ぐりがかゝる、是は当然の事じゃアないか、なア、決して手前を咎《とが》にはせん、白状さえすれば素々《もと/\》通り出入もさせてやる、此の秋月が刀にかけても手前を罪に落さんで、相変らず出入をさせた上に、お家の大事なれば多分に手当をいたして遣《や》るように、此の秋月が重役|等《ら》と申合せて計らって遣《つか》わす、何も怖い事はないから有体《ありてい》に言ってくれ、殿様のお為じゃ、殿様が有難いと心得たら是を隠してはなりませんよ、のう源兵衞」
源「へえ、私《わたくし》が愚昧《ぐまい》でございまして、それゆえ申上げますことも前後《あとさき》に相成ります事でございまして、何かとお疑ぐりを受けますことに相成りましたが、なか/\何う致しまして、水飴の中へ毒などは入れられません、透《す》いて見えます極製《ごくせい》でございますから、へえ、なか/\何う致しまして、其様《そん》なことは……御免遊ばして下さいまし」
と泣声を出し涙を拭《ぬぐ》う。
秋「何故《なぜ》泣く」
源「私《わたくし》は涙っぽろうございます」
秋「涙っぽろいと云っても何も泣くことはない、別段仔細は無いから……左様な事は致すまいなれども、また御舎弟様付とお上屋敷の者と心を合せて、段々手前も存じて居ろうが、どうも御舎弟さまを邪魔にする者があると云うのは、御癇癖《ごかんぺき》が強く、聊《いさゝ》かな事にも暴々《あら/\》しくお高声《こうせい》を遊ばして、手打にするなどという烈《はげ》しい御気性、乃《そこ》でどうも御舎弟様には附《つき》が悪いので上屋敷へ諂《へつら》う者も多いが、今大殿様もお加減の悪い処であるから、誠に心配で、万一《もしも》の事でもありはせんか、有った時には御順家督《ごじゅんかとく》で、何うしても御舎弟紋之丞様を直さねばならん、ところがその、此処《こゝ》に婆《ばゞあ》が居っては……他聞を憚《はゞか》ることじゃ……婆が聞いて
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