|此処《こゝ》に居ては都合が悪い、就《つい》ては金子《かね》が二十両有るからこれをやろう」
有「へえ、是は有難うごぜえます」
大「其の代り少し頼みがある、手前小梅のお中屋敷へ忍び込んで、お居間|近《ぢか》く踏込み……いや是は手前にア出来ん、夜詰《よづめ》の者も多いが、何かに付けて邪魔になる奴は、彼《あ》の遠山權六だ、彼《あれ》がどうも邪魔になるて」
有「へえー、あの国にいて米搗《こめつき》をしてえた、滅法界《めっぽうかい》に力のある……」
大「うん、彼奴《あいつ》が終夜《よどおし》廻るというので、何うも邪魔だ」
有「へえー」
大「彼《あれ》を手前殺して、ふいと家出をしてしまえ、何処《どこ》へでも宜《よ》いから身を隠してくれ」
有「彼《あれ》は殺せやせん、それはお前さん御無理で、からどうも彼《あ》のくれえ無法に力のある奴ア沢山《たんと》有りません、植木屋が十人もよって動かせねえ石を、ころ/\動かします、天狗見たような奴で、それじゃアお前さん私《わっし》を見殺しにするようなもので」
大「いや、通常《たゞ》じゃア敵《かな》わない、欺《だま》すに手なしだ、あゝいう剛力《ごうりき》な奴は智慧の足りないもので、それに一体|彼奴《あいつ》は侠客気《きょうかくぎ》が有ってのう、人を助けることが好きだ、手前何うかして田圃伝《たんぼづた》いに行って、田圃の中へ入らなければならんが、彼所《あすこ》にも柵があるから、其の柵矢来の裏手から入って、藪の中にうん/\呻《うな》っていろ」
有「私《わっし》がですかえ」
大「うん、藪の中に泥だらけになって呻っていろ」
有「へえ」
大「すると忍び廻りで權六がやって来て何だと咎《とが》めるから、構わずうん/\呻れ」
有「気味の悪い、そいつア御免を蒙《こうむ》りやす、お金は欲しいが、彼奴《あいつ》の側へ無闇に行くのは危険《けんのん》です、汝《おのれ》は何だと押え付けられ、えゝと打《ぶ》たれりゃア一打《ひとうち》で死にやすから」
大「そこが欺すに手なしだ、私は去年の九月松蔭を暇《いとま》になりまして、行《ゆ》き所《どこ》がございません、何うかして詫にまいりたいが中々主人は一旦言出すと肯《き》きません、あなたはお国からのお馴染だそうでございますが、貴方が詫言《わびごと》をして下すったら否《いや》とは云いますまいから、何分お頼み申しますと、斯う手前泣付け」
有「
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