々見たように結って、柾《まさき》の嫩《やわら》っこい葉でピイ/\を拵《こしら》えて吹いてたのが、此様《こん》な大《でか》くなって、綺麗な情夫《おとこ》を連れて突走《つッぱし》って来たか、自分の年い老《と》ったのは分んねえが、汝《われ》が大《えか》くなったで知れらア、心配《しんぺえ》せねえでも宜《え》い、お母《ふくろ》さまが置くも置かねえもねえ、何うしても男と女はわるさアするわけのものだ、心配《しんぺえ》せねえでも宜《え》い、どうせ聟養子《むこようし》をせねえばなんねえ、われが死んだ父《とっ》さまの達者の時分からの馴染《なじみ》で、己が脊中で眠《ね》たり、脊中で小便《はり》垂れたりした娘子《あまっこ》が、大《でか》くなったゞが、お前さんもまんざら忌《いや》ならば此様《こん》な処まで手を引張《ふっぱ》って逃げてめえる気遣《きづけ》えもねえが、宿屋の婿《むこ》になったら何うだ、屎草履《くそぞうり》を直さねえでも宜《え》いから」
梅「それは有難い事で、何《ど》の様《よう》な事でもいたしますが、拙者は屋敷育ちで頓《とん》と知己《しるべ》もござらず、前町《まえまち》に出入町人はございますが、前町の町人どもの方《かた》へも参られず、他人《ひと》の娘を唆《そゝの》かしたとお腹立もございましょうが、お手前様から宜しくお詫びを願いたい、若《も》し寺へまいるような子供でもあれば、四書五経ぐらいは教えましても好《よ》し、何うしても困る時には御厄介にならんよう、人家《ひと》の門《かど》に立ち、謡《うたい》を唄い、聊《いさゝ》かの合力《ごうりょく》を受けましても自分の喰《たべ》るだけの事は致す心得」
清「其様《そん》な事をしねえでも宜《え》え、見っともねえ、聟になってお母《ふくろ》の厄介になりたくねえたって、歌ア唄って表え歩いて合力てえ物を売って歩いて、飴屋見たような事はさせたくねえ、あの頭の上へ籠《かご》か何か乗《のっ》けて売って歩くのだろう」
梅「いえ、左様な訳ではございません」
清「然《そ》うで無《ね》えにしても其様《そん》な事は仕ねえが宜《え》い、そろ/\参《めえ》りましょう、提灯を持っておくんなせえ、先へ立って」
若「お前ね、私は嬉しいと思ったら草臥れが脱《ぬ》けたから宜《い》いよ」
清「まアぶっされよ」
若「宜いよ」
清「宜《え》いたって大《えか》くなっていやらしく成ったもんだから
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