拭《ふ》き掃除をして居りますと、杖《つえ》を曳《つ》いて小野庄左衞門が門口から、
 庄「今帰って来たよ」
 町「おやお父様《とっさま》、お帰り遊ばせ」
 庄「雪の翌日《あした》で大きに凌《しの》ぎ宜《よ》いのう」
 町「はい、今日《こんにち》はお外でもお暖かでございましょう」
 庄「あゝ医者が外へ出るのは能《よ》くないと云うから家《うち》にいてお茶でも入れようかな」
 町「あの、生憎《あいにく》お茶が切れました」
 庄「茶を買ったら宜かろう」
 町「はい、生憎お鳥目《ちょうもく》が切れました」
 庄「いやそれは困りました、屑屋《くずや》でも来たら何か払っておいたら宜かろう」
 町「さア払う物もございません、それにお天気都合が悪いので二三日参りませんから、先《せん》のお鳥目が切れましたから、お茶を買いますお鳥目がございません」
 庄「紙屑買などが来ないと貧乏人は困るなア、己《おれ》も細字《さいじ》は書けないが大字《だいじ》なら書けるから少しでも見えるようになればよいのう」
 町「お父さまは少しお見え遊ばすと直《じ》きお外出《そとで》をなすっていけませんから、寧《いっ》そお見え遊ばさない方
前へ 次へ
全321ページ中55ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング