うので、富士講に木魚講、法印が法螺の貝を吹く」
文「成程立派なことで」
亥「それも宜《い》いけれども食えもしねえ線香や蝋燭などを山のように積んで、菓子や茶の袋を配るのが千軒もある」
文「成程、亥太郎さん、貴方のことだからお差支《さしつかえ》もあるまいが、余程のお物いりだね」
亥「へえ、仕様がねえ」
文「外《ほか》の事とも違うから、御不足はあるまいが御入用なれば文治郎これだけ入ると、打明けて云うて下さるのが友達の信義だから、多分のことは出来まいが、少々ぐらいのことなら御遠慮なくお云いなさい」
亥「へえ/\……からビッショリ汗をかいて仕舞った……実は金を借りに参ったので」
文「道理でおかしいと思った、一つ言《こと》ばっかり仰《おっし》ゃるから、お正直です」
亥「今まで身上《みじょう》が悪いから菓子屋も茶屋も貸さねえ、仕方がねえから旦那の所へ来たが、玄関の所へ来て這入り切れねえ……旦那済みませんが貸して下せい」
文「道理で……宜しい/\あなたが道楽に遣《つか》うのでない立派なことです、何程《なにほど》御入用……それで済みますか五十金……お母《っか》さまお貸し申しましょうか」
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