申せ……お母《っか》さま、亥太郎が参りました」
母「そうかえ、まア/\此方《こちら》へ」
亥「御無沙汰致しまして、お変りもございませんで」
母「お前さんも達者で、つい此の間も噂をして居りました、さア此方《こっち》へ」
文「亥太郎さん、文治郎は大きに御無沙汰をした、少し取込んだことがあって」
亥「今、森に聞けばお嫁さんが来たって、知らねえものだから、知らせておくんなされば詰らねえ祝物《いわいもの》でも持って来なければならねえ身の上で、お祝いにも来ねえで、何《な》ぜ知らせて下さらねえ」
文「いや/\未だ内輪だけのことで」
母「只今文治の云う通り内輪だけのことで、改まって婚礼をするときは貴君方《あなたがた》にも知らせる積りでございます」
亥「だって私《わっち》は内輪でございやす、なアにこれは詰らねえものでございやす、お嫁さんにお目に懸りてい」
母「町や……年が行《ゆ》きませんから」
亥「へえ、こりゃアどうも/\そんなに長くお辞儀をなすっちゃアいけねえ、私《わっち》どもは二つずつお辞儀をしなければならねえ、こんな良《い》いお嫁さんはございませんねえ、お姫様のようだ、私《わっ
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