郎という奴は、見掛けは弱々しい奴で、腹の中は良くない奴で、大伴に諛《へつら》いまして金でも貰おうという事ばかり考えて居ります。丁度七つ下《さが》りになりまして大伴の処へ参りますと、幸い蟠作も居りません、蟠龍軒独りで小野庄左衞門を殺して取った刀へ打粉《うちこ》を振って楽しんで居ります。
蟠「誰《たれ》だえ」
忠「阿部でございます、只今お玄関へ参った処が誰《たれ》も居りません、中の口へ参っても御門弟も居りませんから通りました、何《なん》です、お磨きですか」
蟠「さア此方《こっち》へ来な、誰《たれ》も居らぬが、これは先達《さきだっ》てお茶の水で小野を殺害《せつがい》致して計らず手に入《い》った脇差だが、彦四郎貞宗だ、極《ご》く性《しょう》が宜しい」
忠「はア、彼《あ》の時の……又先達ては多分の頂戴物《ちょうだいもの》をいたしまして有難うございます」
蟠「縁頭《ふちかしら》は赤銅七子《しゃくどうなゝこ》に金で千鳥が三羽出ている、目貫《めぬき》にも千鳥が三羽出ている、後藤宗乘《ごとうそうじょう》の作だ」
忠「大した物ですなア」
蟠「柄糸《つかいと》も悪くもない、鍔《つば》は金家《か
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