居りましたが、それは有難いことで」
 中原は上座へ直りまして、
[#ここから引用文、3字下げ、はじめの「一」のみ2字下げ]
一|其方儀《そのほうぎ》先達《さきだっ》て長《なが》の暇《いとま》差遣《さしつか》わし候処《そうろうところ》以後心掛も宜しく依《よっ》て此度《このたび》新地《しんち》二百石に召し返され馬廻り役|被仰付候旨《おおせつけられそうろうむね》被仰出候事《おおせいだされそうろうこと》   重  役 判
[#ここで引用文終わり]
 藤「はア」
 と藤原は恐入って、思わずポロリと男泣に泣きました。
 藤「あゝ此の上もない有難いことでございます」
 中「誠に御恐悦、これは役だから先《ま》ず役だけ済んだ、これから緩《ゆっく》り話しましょう……時にお差支《さしつかえ》もあるまいが此の中には五十両あります、故郷へは錦を飾れという事でございますから、飾りは立派にして帰れば親族の手前も鼻が高い、茲《こゝ》にあいて居《お》る金が五十|金《きん》あるから使って下さい」
 藤「はゝゝゝ誠に千万|辱《かたじけ》のうござる、親類なればこそ五十金という金を心掛けて御持参下さる、此の恩は忘却致しません」
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