と庭へ下りて、無地の手拭を取って面部を包み、跣足《はだし》で出て行《ゆ》きますからお町はおど/\しながら袖《たもと》に縋《すが》り、
町「申し、旦那さま、御機嫌よう」
文「うん頼むぞ」
三尺の開きを開けて出て行《ゆ》きました。跡を閉《た》てゝお町はあゝ情《なさけ》ないことだと耐《こら》え兼て覚えず声が出ます。泣声がお母《っか》さまに知れてはならぬと袂を噛《か》みしめて蚊帳の外に泣《なき》倒れます。彼《か》れ此れ明《あけ》七つ頃に庭の開きをかち/\と静かに敲《たゝ》きます。
文「お町/\」
町「はい、お帰り遊ばしたか」
と其の儘|飛石《とびいし》伝いに下りて行《ゆ》きます。其の晩は大伴を斬り損ないまして癇癖に障ってなりません。これから風呂敷を解いて衣服《きもの》を着替え、元のように風呂敷包を仕舞って寝ようと思いましたが、これまで思い付いた宿志《しゅくし》を遂げないから、目は倒《さか》さまに釣《つる》し上り、手足は顫《ふる》え、バターリッと仰向《あおむけ》さまに寝て仕舞いました。仰向に寝たが寝られませんから、又|此方《こっち》を向くと、それでも寝られませんから又|起上《おき
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