してやると云うて掛合った処が、頑固な爺《じゞい》で、馬鹿|呼《よば》わりをして先生もお腹立であったが、今まで耐《こら》えて居《お》った、貴公が行《ゆ》けば阿部|忠庵《ちゅうあん》とでも云えば宜しい、向うは学者で医学の書物を読んで居《お》るから答えが出来ぬでは困るからね」
 忠「此方《こっち》は些《ちっ》とも知らぬから書いて呉れぬといけない」
 穗「宜しい、書きましょう」
 硯箱を取って細かに書きまして、
 穗「さアこれで宜しい、此の薬を服《の》めば必ず全快致す、服薬の法もあります」
 忠「医者の字は読めぬね、何《なん》ですえ、明《あきら》かの樓《たかどの》の英《はなぶさ》の」
 穗「そんな読みようはない、明《みん》の樓英《ろうえい》の著《あら》わした医学綱目《いがくこうもく》という書物がある、その中《うち》の蘆膾丸《ろかいがん》というのが宜しい」
 忠「成程、蘆膾丸か、幾つも名がありますねえ」
 穗「それは薬の名だ」
 忠「成程、棒が二本書いてある」
 穗「蘆膾丸だから棒が二本あるのだ」
 忠「成程、それからウシのキモ」
 穗「ウシのキモでは素人臭い、牛胆《ぎゅうたん》」
 忠「それか
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